機関長あいさつ

伊藤機関長(大) - コピー

 

 

 

 

 
 
 地球温暖化をはじめとする環境の大きな変化等が私たちにもたらす問題の数々は、私たち人類共通の解決すべき課題です。それらの問題の多くは、私たちの人為的な活動がもたらしたものであります。地球システム、社会システム、人間システムのすべてが関係するこの諸問題の解決は、ひとつの学問分野の取り組みでは、とうてい叶いません。そのような認識とともに21世紀になって生まれたのが、学際的、さらには超学的な分野といわれるサステイナビリティ学(Sustainability Science)です。

 このような背景のもと茨城大学では、20064月に立ち上がった「サステイナビリティ学連携研究機構」(Integrated Research System for Sustainability Science: IR3S20108月には一般社団法人「サステイナビリティ・サイエンス・コンソーシアム」(Sustainability Science Consortium: SSC)に衣替え)に参加し、同年5月に地球変動適応科学研究機関(Institute for Global Change and Adaptation Science: ICAS)を立ち上げました。学内の全学部から参加教員を得て、「地球変動」の問題を軸に、そこだけに問題を限定せず、さまざまな持続可能性の追究に取り組んできました。国内外の諸大学で同じような動きがありますが、ICASは文理のバランスに優れた取り組みをしてきました。そこには、自然科学からのアプローチだけではなく、人文科学および社会科学からのアプローチ、ひいては文理融合的な共同作業が不可欠だという認識があります。

 ICASの立ち上げからこれまでの間に、私たちは東日本大震災(2011311日)を経験しました。大地震および大津波だけでなく、福島第一原発の甚大な事故を受けて、それまでの社会のあり方の問い直しがなされています。たとえば、「安全・安心はどのように生みだされるのか?」という問題があります。国や自治体などが「安全」を保障し、それを私たちが信用して「安心」を得るという構図は、もはや単純には取ることができなくなりました。自然科学的なアプローチと同時に、このような理論的問題を、たとえば哲学や心理学、社会学や歴史学、経済学や政治学といった分野からも探究していかねばなりません。

 さらには私たち大学にいる研究者だけがこうした問題に取り組めばよいのではなく、多くの市民がそれぞれの立場を越えて、対話し繋がっていけることが必要です。一人ひとりの私たちが、自立して物事を真摯に考える一市民として社会に対話的に参加していくことが求められています。年に2ICAS主催で開催しているポスターワークショップ「あつまる、まじわる、つながる」は、そのための場でもあります。

 私は20149月、三村信男先生(現茨城大学学長)に代わって、ICASの機関長に就任しました。専門は社会心理学であり、主な研究フィールドとしてきたベトナムで、統一され社会主義国となった後に元南ベトナム兵士などが語るに語れない葛藤を抱えている様子などを捉えてきました。むしろ対話的な関わりを重視する方法で社会的な動物である人間のありようをとらえようという社会心理学の姿勢は、サステイナビリティ学のなかでも重要です。サステイナビリティ学の教育および研究の拠点であるICASの長を文系の私が務めるのも、そこにむしろ積極的な意味合いを付与していくことができると考えています。

 茨城などの地域に根ざし、アジア諸国を中心とした諸外国の大学等とも連携して、「安全・安心」が容易には見いだせないポスト震災社会におけるサステイナビリティ学に、これからも真摯に取り組んでまいります。学内の教職員・学生だけでなく、市民のみなさんも参加ができる機会を充実させていきます。これからも心強いご支援をお願いいたします。

                                                                       茨城大学地球変動適応科学研究機関 機関長
                                                                                              伊藤 哲司

 

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